研究課題/領域番号 |
20520388
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
富平 美波 山口大学, 人文学部, 教授 (00188799)
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キーワード | 中国語 / 音韻学 |
研究概要 |
本年度から本務校での勤務状況に変化が生じたため、研究のエフォートが下がり、予定通りの研究時間を割けなくなったが、「交付申請書」に記入した研究実施計画の半ばまでは達成することがでさた。 (1)前年度の調査結果に基づき、「切字釈疑」第5節「真庚能備各母異状」について、訳注と考察を含む小論を公表した。 (2)同第6節「啌〓上去入」について、訳注と考察を含む小論を公表した。 (3)残る第7節から第10節までの本文について、テキスト間の字句の校合を済ませ、本文の校合作業はすべて終了した。 (4)夏期休暇の期間に、国立公文書館(旧内閣文庫)と東京大学東洋文化研究所に文献調査に赴き、「切字釈疑」が引用している韻書や学術筆記類を閲覧し、主要な文献については必要部分の複写を依頼した。 (5)第6節中で参照されている韻書『新訂中州全韻』を閲覧するため、京都大学人文科学研究所と前田育徳会に調査に赴いた。その結果、巻首に掲載されている興味深い記事の数々や、本文中で声調の陰陽調の区別がどのように表示されているか等を確認することができた。またふたつの蔵本が内容的には同じものであることもわかった。 作業を通じて、著者方中履とその時代の音韻学の個性のいくつかを見いだすことができたと思う。例えば、清朝小学の世界ではあまり顧みられないところの仏教寺院に伝承される悉曇学の知識を参照している点や、曲韻書の類やイエズス会士の業績を重視している点、方言音を博引しようとする点などもそれにあたると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究に振り向けられる時間が減少したのが原因で、22年度までに実施した調査に基づく研究成果の公表はできたものの、新しい調査が予定通りに進展しなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
作業の進展速度が遅くなり、なお計4節に及ぶ部分の訳注作成が未完成であるが、研究にかけられる時間の比率は変化を見せない。次年度には、第7節「発送収」・第8節「叶韻」の部分について訳注と考察を含む研究成果を公表することを目的としてとりくみ、合わせて、その次の年度に第9節「沈韻」・第10節「方言」についての同様の成果を公表できることをめざした調査研究をも進めておきたいと考えている。
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