研究課題/領域番号 |
20520393
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
佐野 直子 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 准教授 (30326160)
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研究分担者 |
木村 護郎クリストフ 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90348839)
塚原 信行 愛知県立大学, 外国語学部, 非常勤講師 (20405153)
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キーワード | ヨーロッパ / 多言語社会 / 領域性 / 少数言語 / 言語政策 |
研究概要 |
今年度は、国内で3回の会合(7月5日、10月25日、3月31日)を開き、それぞれの地域の言語の領域性の歴史的経緯や、現在起きているさまざまな問題認識の共通点や相違点について確認した。また、予備調査や文献収集を各自行った(木村:ドイツベルリン・エアランゲン、ポーランドシロンスク地方、塚原:スペインバルセロナ、佐野:スペインアラン谷、フランスベアルン地方・バスク地方)。 以上の会合や調査によって明らかになったのは、言語の領域性の認識それ自体はヨーロッパで19世紀以降急速に波及したが、その言語地図の作成時期や方法、さらに作成された地図の意味や利用方法がそれぞれに異なるという点である。「言語境界線」を年を追うごとに変化するものとしてとらえる場合、一度境界線を可視化したらそれ以上は動かさない場合、さらに混交が進んでいる言語地域では、「かつてこうであったはず」の地図を再構成しようとする場合も見受けられた。同じ調査を元にしても違う言語境界線を描くことも可能である点も指摘された。さらに、言語が混成する都市部などをどのようにみなすかといった問題も、都市化や人口の流動化が進む現在、大きくなることが考えられる。 また、少数言語に対して具体的な「言語政策」を行うにあたって、言語の「領域性」は正当性を付与する重要な根拠となるが、領域的な言語政策を担う主体がどのようなもの(大小の自治体、公的独立法人、文化団体など)で、その言語をどのように位置づけるか(文化遺産・資源として、権利として、民族の根拠として、など)によって、政策の手法や話者の言語意識も大きく変わりうることが確認された。 たとえば、それぞれの州政府が独自の言語政策を担う場合は、より効果的な言語政策が可能になるが、話者の言語意識が州境・国境によって分断されうる。一方、文化団体によって言語政策が行われる場合、話者は「脱領域化」した言語意識をもちうる、などである。
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