本年度は、2度のインドへの現地調査によって、クルフ語およびマルト語の民話収集と書き起こし、および文法調査をして、また語彙収集の作業を始める予定にしていた。しかし1度目の調査中に盗難によって資料を失い、そのためクルフ語についてしか調査することはできなかった。2度目の調査ではクルフ語、マルト語の調査地を確定した上で、コンサルタントから予備的語彙調査を始め、また民話等口頭伝承の採取と書き起こしを行った。 クルフ語は話者数の急速な減少に直面しており、ヒンディー語の影響が少ない調査地を見つけることが困難であった。またマルト語は方言差が激しく、中心となる方言を同定することが容易でなかった。したがって調査地とコンサルタントを確定したことはきわめて重要な一歩であった。 語彙については、今年度の作業は書き起こし録音から語彙を回収していくという形を取らざるを得なかった。調査期間が短いため、聞き取りによって語彙調査を行うことが容易でなく、かつ調査票を預けて記入してもらうという方法が成功しなかったので、体系的な語彙調査にはまだ取り組むことができていない。
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