研究概要 |
本研究は,発話理解の実態を明らかにすることを目標に,パラ言語的情報のうちで特に韻律に注目し,ひらがな表記では同一だが(東京方言では)アクセント核の有無と位置によって名詞と2項動詞に区別 (1)a.山田さんが自宅にかえる(蛙)と金魚を買って帰った。(「文法的」が正解) b.*山田さんが自宅にかえる(帰る)と金魚を買って帰った。(「非文法的」が正解) (2)a.山田さんが自宅にかえる(帰る)と奥さんが留守だった。(「文法的」が正解) b.*山田さんが自宅にかえる(蛙)と奥さんが留守だった。(「非文法的」が正解) 実験の結果,(1b)よりも(2b)の方が誤アクセントの検出が難しかった。このことは意味役割授受に関する統語的制約の「曖昧語」解釈への影響を示唆している。また,作動記憶容量の大きな話者は誤アクセントの検出率が低かった。作動記憶容量の大きな話者は,言語処理が「有能」だと評価されることが多いが,少なくとも本実験課題について大容量話者は有能と言えない。作動記憶容量と言語処理能力との相関は処理内容に応じて一様ではなく,さらなる実証が必要である。
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