研究課題
本研究プロジェクトは、心理言語学研究のひとつである母語獲得のメカニズムを、特に機能範疇の獲得に焦点を当て、生成文法理論の枠組みで捉えるものである。本研究の目的は、複数の言語における言語獲得の中間段階の文法体系を精査し、それらの背景にある普遍文法の原理・パラメターを言語獲得と文法理論の両面から探り、言語獲得理論の精緻化を目指すものである。本年度の具体的な成果は、以下のとおりである。(1) 本科研プロジェクトでは、ヨーロッパ言語を中心として言語獲得の初期段階にみられる主節不定詞Root Infinitivesという現象の根本的理由が時制の未指定の段階であることを示し、言語によっては不定詞の形式ではなくデフォルトの動詞の形式であらわれることを理論的実証的に示した。特に過去3年の研究プロジェクトにおいて、このような主節不定詞現象の段階がヨーロッパ言語のみならず、日本語にもみられることを研究史上はじめて明らかにしたことに意義があるといえよう。今年度は、なぜ空主語を許す言語において、デフォルトの動詞形が表れるのかについて、動詞形態として語幹の独立する言語か否かの形態的パラメターが幼児の最初の動詞の形式を決定することを提案している。本年度はこの成果をさらに対照言語学的に分析し、北アメリカ生成文法獲得学会GANALA(トロント大学)ならびに日本語韓国語学会(オックスフォード大学)、南山大学言語学研究センター内でのワークショップなどで発表した。(2) 機能範疇の中で補文標識や限定詞などについても幼児(0歳児)から4歳までの実証研究を整理し、その成果を学内の言語学研究センター報や国際学会(Glow in Asia)での招聘講演などで発表し、また、日本語韓国語言語学会で発表した上記(1)の成果に加え、一昨年、アルタイ語形式言語学国際ワークショップ(WAFL:招聘)などにおいて発表した成果を論文として執筆した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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http://www.ic.nanzan-u.ac.jp/LINGUISTICS/