研究概要 |
当初の計画通りウイグル語仏典断片のテキストエディションをおこなった。 1.スエーデン民族博物館所蔵のウイグル文『阿毘達磨倶舎論』(貝葉本16葉)を完全に転写し英訳を施した。今後は語彙と解説部分とを整備してドイツから出版する予定である。さらに『入阿毘達磨論』3葉の転写と和訳も完成させた。 2.ロシア所蔵品からは東洋文献研究所所蔵の5断片(SI Kr.1/25,26,31,32,34)が『入阿毘達磨論』注釈書断片であることを同定し、テキストエディションを作成した(Contribution to the Studies of Eurasian Languages No.15)。また、SI Kr.IV260が『千字文』であることを同定しテキストエディションを出版した(Uigurskii fragment pod shifrom SI Kr.IV260iz sobranija,IVR RAN Pis'mennye pamjatniki vostoka No.8)。なお、上記『入阿毘達磨論』は極端な草書体で書かれており、マイクロフィルムからは完全な解明が難しいので直接サンクトペテルブルグの東洋文献研究所へ赴いて実地調査をおこなった。 3.ドイツ所蔵品からは2点のウイグル文字音写漢文仏典を同定した。一つはブランデンブルグ科学アカデミーの所蔵するCh-U7729で、これが漢文『梵網経』を音写したものであることを同定し、漢字音テキストの復元をおこなった(耿世民教授80歳記念論集へ寄稿)。もう一つは国立アジア美術博物館に所蔵するMIK III7256が漢文『増一阿含経』を音写したものであることを同定し漢字音テキストを復元した(Marcel Erdal教授65歳記念論集へ寄稿)。
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