本研究では、日本語の現代諸方言音調データと平家正節を中心としたアクセント史資料データをもとに比較・対照研究を行い、体系的観点をとりいれた最適性理論の枠組みにもとづき、理論的分析を行おうとしている。 研究初年度にあたる平成20年度には、アクセント史資料の文献調査を行うとともに、海外の関連シンポジウムに出席し、理論的枠組みの最新の研究動向について、情報収集をおこなった。 また、これまでの調査結果にもとづき、現代共通語・京都語・倉敷語および平家正節データという四つの日本語変種における「〜モ」のアクセントデータを対照し、下の11.に記した研究論文1篇の発表をおこなった。そこでは、主に次の2点について論じている。1)現代京都語で生じている低起無核化は平家正節期よりも新しい発達と考えられる点、2)共通語と、倉敷語をはじめとする5地点の岡山語・広島語データとを調べると、全面否定の「不定語+モ」のアクセントを、各地の基底における不定語およびモのアクセント特徴指定だけからすべて計算することはできないと考えられる点。
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