本研究では、次の2点を中心とする成果をえた。第一には、京阪語史の中で生じたと考えられる分節-超分節特徴間の相関(すなわちVoiceless-HighPitch v.s. Voiced-LowPitch)について、そのような有標性制約のランキング昇格が体系的に生じたと考えられる時期は、平家正節期よりも下ると考えられる点。第二に、通常白声や口説で無譜記になることがない、WH疑問文中のFocus要素である疑問詞が、無譜記となる一つの場合として、罵倒のような強い感情態度を伴う表現に直接後続した場合があり、その場合両者が統語的修飾関係になくても、Focus要素より左周辺部に位置したEmphatic要素の卓立により、Focus要素の卓立が抑制されたケースとみなしうる点を、最適性理論の枠組みをもとに分析した点、である。
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