平成21年度研究成果報告書 2回の実地調査により、地元在住の3名の方言話者の自然談話を高音質のデジタル音声資料として記録・保存することができた。二の音声資料は文字データ化され、各種の検索・分析に供せられる状態にある。当該方言の資料としては、民話の録音資料や俚諺集がいくつかある程度で、自然談話の記録はほとんどなく、文法分析に堪えるものではなかった。今回のデジタル音声資料・文字資料は、この方言の文法研究のための一次資料として、貴重な価値をもつ。録音・文字化作業は、次年度も継続する予定である。 平成20年度に実施した、動詞のテンス・アスペクト調査につづいて、今年度は、モーダルな複合述語をとりあげて、研究代表者の内省と、地元方言話者の内省との照合作業を行った。対象とした形式は、可能表現(スンニイ)、必要・義務表現(スネゲネ)、許可・許容表現(ステモイ)である。それぞれ、不可能表現「サエネ」、不必要表現「スネクテモイ」、禁止表現「ステワガンネ」との対立の中で、それぞれの形式がどのような条件の下にどのような意味・機能を実現するか、可能な限り詳細に記述した。 2回の中田方言検討会議を開催し、大阪大学大学院教授工藤眞由美氏、京都光華女子大学准教授八亀裕美氏の指導・助言を得ながら、当該方言の文法研究の基礎となる、述語構造に関する貴重な知見を得た。
|