本研究は、平安時代の院政期に活躍した勧修寺法務寛信(1084-1153)の、数多くの、そして多彩な撰述書が、日本語史研究資料、特に書記史、文体史に資する有益な文献であるとの認識から、その古写本の実地調査を行い、当該文献群の資料的性格の解明と書記史、文体史研究の新たな方向性を提示することを目的とする。この目的を達成するために、以下のような研究計画を立てた。 (1)勧修寺法務寛信の関係した文献は、撰述書、訓点資料、和歌、日記等多岐にわたる。これらが、どこにどのような形で所蔵されているかを調査する。具体的には、以下の諸寺院を中心に現地調査を行う。 (1)東寺 (2)高山寺 (3)石山寺 (2)上記の寺院等で実地に原本に従って、書誌的情報及び語学的情報(書記、文体)を記録し、データとして蓄積する。 (3)文献ごとに、書記上の特性を軸に、これと文体、語彙・語法上の特徴との相関を観察する。 (4)勧修寺法務寛信以外の、当時の書記・文体の全体的状況を踏まえることで、寛信の言語資料を相対化する。
|