本年度は 1.記述方法の理論的改良 2.文献資料によるデータの収集 を中心に研究をおこなった。方言臨地調査は研究代表者およびインフォーマントの都合により次年度以降に回すこととなった。 1については、 1.1.不規則動詞の諸方言におけるさまざまな変異をシンプルかつ的確に記述するためには、「複数の語幹を切り替えてもちいる動詞」という立場から記述する方法が、最適であることを他の記述法との比較検討によって確認し、記述方法の精密化につとめた。 1.2.「二段活用の一段化」についても「複数の語幹を切り替えてもちいる動詞」という立場から記述する方法を考えた。 1.3.「音便形でも動詞の弁別は保たれる」ことを検証し、音便形の成立過程を考えた。 1.4.従来の活用記述方法がすべて「生成・発信」の立場にたつもので、「受信・解析」の場合にはそのまま使えないことから、活用の「受診・解析」の諸問題を検討し、記述方法を考えた。 2については、主に『鎌倉遺文』によって、中世の動詞音便形の用例を収集した。
|