本年度は 1.方言臨地調査 2.文献資料によるデータの収集をおこなった。 1については 大分県中津市奈良県吉野郡天川村洞川において調査をおこない、 1.1.動詞活用 二段活用の残存と、母音終わり語幹動詞の~r語幹化についてそれぞれ特異なあり方を示す、東九州方言の典型例(中津) 1.2.音便形 サ行イ音便の義務的な出現、ガ行の撥音便化というきわめて特異な特徴をもつ方言(洞川) 1.3.アクセント活用 東京式アクセント最西端の地域(中津) 近畿中央部に京阪式アクセントに囲まれて孤立している東京式アクセントの地域(洞川)という、それぞれ特色のある体系の記述をおこなうとともに、それらのデータにもとづいて、記述方法の改善・拡張をこころみた。 また、有元光彦著『九州西部方言動詞テ形における形態音韻現象の研究』のデータを再検討することを通して、「活用の後に起きる(活用後の出力に対して加わる)音転」についても検討し、その記述方法を考えた。 2については昨年度にひきつづき、『鎌倉遺文』を中心に、中世資料から動詞音便形のデータを収集した。
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