本研究は、今日まで筆者が調査して来た抄物の調書と複写物とを分類・整理し、更に新しい抄物の発掘・追加に努めて、抄物目録を完成させることを目的としている。本年度は、仏書抄物の目録の作成と、既に目録を作成している漢籍などの抄物目録の増補改訂とを進めた。 1、調書と複写物の整理 抄物調書と複写物とは原典別に分類してあるが、未分類のものと新しく調査したものとを追加・分類した。仏書の部は『虚堂録抄』『四教儀抄』『法華経抄』など約65種が確定できた。 2、資料性の解明 一つ一つの抄物についてその資料性の解明を進めた。本年度の成果の著しいものとしては、國學院大學本の研究を中心とする『碧巌録抄』諸本の研究、成田山仏教図書館の調査をはじめとする『全九集』諸本の整理、梅寿撰『和名集并異名製剤記』と先行書曲直瀬道三撰『本草異名集』『製剤記』との関係の解明などをあげることができる。 3、現地調査と複写物の作成 成田山仏教図書館・建仁寺大中院・国立国会図書館・宮内庁書陵部・天理図書館・京都大学附属図書館などにおいて抄物の調査を行い、前二者においては抄物の写真撮影を行った。國學院大學図書館蔵『碧巌録抄』・宮城県図書館蔵『全九集』2種・国立公文書館内閣文庫蔵『奇効良方』の複写物を入手することができた。 4、目録作成 如上の調査研究を承けて、医学書抄物の増補改訂目録の作成と、『碧巌録抄』をはじめとする仏書抄物目録の完成とに努めた。このうち一部を「医書の抄物-(原典、漢籍医書)」として発表した。
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