日本語は、いかなる原理でいかなる方向に動き来たり、今ある姿をしてここにあるのか。我々は、先学が明らかにして来た数多くの個別事象についての研究成果を前にしてその答えを求めて模索している。この状況を乗り越える道の一つは、日本語が大きく転換する中世の口語研究資料を発掘・整備し、これを深く読み込むことである。東部方言「ダ」対西部方言「ジャ」という定説を尊経閣文庫蔵『論語講義筆記』が覆したように、どのような資料が眠っているか知れないのである。本研究は、研究が遅れている抄物を発掘・整備し、その資料目録を作成して、日本語史研究の進展に資せんとしたものである。
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