本研究では、音韻論の最新成果を踏まえながら、正常発達児の音韻発達データを分析、研究し、読み障碍のスクリーニング・診断などに役立つ基礎資料を提供するとともに、音韻理論の妥当性を英語と日本語の音韻発達データを使って検証していくことを目的としている。 前年度は「音韻意識」を取り入れた分析を行うために、小学1年生の正常発達児のデータ分析を行い、左端のフットの影響と思われるエラーが多く観察されたことを報告した。平成21年度は、発達遅滞児のデータに焦点を当て、発話内のエラーとフットとの関係について詳細に分析をおこなった。その結果、この種のデータでは、バイナリー・フットの影響と思われるエラーが多く観察されることが明らかとなった。この傾向は、ダウン症児にもみられ、バイナリー・フットからの縛りから「解放」されることがやはり音韻獲得上、重要な鍵を握っているということが明らかとなった。こうした研究成果はClinical Linguistics and Phoneticsというジャーナルの論文という形でまとめた。
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