本研究では、正常発達児の経時的音韻データを分析、研究し、読み障碍のスクリーニング・診断などに役立つ基礎資料を提供するとともに、音韻理論の妥当性を英語および日本語の音韻発達データに基づいて検証していくことを目的としている。 前年度に引き続き、今年度も音節、モーラといった韻律構造のみに終始するのではなく、フットや語形といったより大きな音韻単位にも注目しながら健常児および障碍児のデータ分析を行なった。 ダウン症児の音韻意識の発達については、これまでの研究で、音韻意識の発達に遅れがあることが指摘されてきた。しかし、従来のように生活年齢に着目するだけではなく、語彙年齢を測定し、同程度の健常児のデータとの比較を行なったところ、初期の音韻意識の発達段階においては、語彙年齢に相当した音韻発達をしていることが示唆される結果が得られた。例えば、直音のみから成る語についてはモーラ分解が可能なこと、また、重音節+軽音節という無標語形を好む傾向などは健常児の発達と極めて類似する点である。 今後は、韻律単位全体を対象としながらさらに詳細に各発達段階について調査していくことで、より適切な指導法や診断基準が提供できると考えられる。
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