今年度の成果は、(1)昨年度の英語音声産出の大規模学習実験の分析を補完する学習実験の実施により「フィードバック」効果の検証と、(2)自動評定のできる英語イントネーション学習ソフトの開発である。具体的には、(1)は音声情報だけを用いた英語の文レベルのイントネーション産出訓練と、昨年度行ったピッチの視覚情報と音声情報の両方を用いた英語の文レベルのイントネーション産出訓練の学習効果を比較するための実験である。未だ分析の途中ではあるが、音声情報だけを用いた英語音声産出の効果の方が高いのではないか、と思わせる結果が出ている。学習者の学習意欲を高めるには何らかの学習者への「フィードバック」が必要であるが、本研究では「視覚情報」がこのフィードバックとして働くと考えている。本年度の研究でピッチという形でのフィードバックはすべての産出訓練に必要なわけではなく、限られたフィードバックでも同じ学習効果が得られる、という仮説を得るに至った。この仮説を証明するために、従来から音声教育で行われている「シャドーイング訓練」との比較も本年度開始した。シャドーイングと本研究との違いは、前者が学習者に何のフィードバックもしないのに対し、本研究はピッチという視覚情報によって学習者にフィードバックを提供するという点である。昨年度はイントネーション訓練と音韻訓練の「順序効果」という研究成果を得たが、本年度は、学習者へのフィードバックの有無による学習効率の違いという観点から、効率的な音声学習の可能性を探ろうとしていることに意義がある。また、学習者に評価を自動的に提示する形の「フィードバック」の可能性を探るために、(2)の評価付きの英語イントネーション学習ソフトを作成した。今後はフィードバックの有無という観点の研究によって、「学習効率」のよい新たな音声学習の方法の開発につなげることが重要であると考える。
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