研究課題
21年度における主な研究内容・成果は次の通りである。時制理論開発担当の和田尚明は、時制解釈の主体としての話者を中心にした包括的時制モデルでもって、特に知覚動詞補部における日英語の時制現象の比較分析を行った。また、英語のbe going toと現在進行形の共通点・相違点を、筆者の提案する時制理論と文法化の観点から体系的に説明した。総称文・進行形の研究担当の岩部浩三は、総称文には潜在的な法助動詞が含まれているという仮定を立てて、そのことから説明が可能になる事象を洗い出した。そして、過去形の総称文には規則読みが不可能であることや、不定単数形を主語に持つ過去時制の文は総称文になれないことなどの説明を試みた。朝鮮語の時制・アスペクト研究担当の和田学は、韓国語の軽動詞構文を対象に、文法性の判断に統計的手法を導入した研究を進めた。フランス語の時制研究担当の武本雅嗣は、主としてフランス語とドイツ語の虚構移動表現における移動動詞の使用の可否について論じた。そして、物理的移動には外的世界で時間が関わっているのに対して、虚構移動には心的レベルでのスキャニングの際に時間が関与することを明らかにした。英語とフランス語の時制研究担当のNathaniel Edwardsは、フランス語の文学的な仮定法過去を検討し、それらが徐々に使われなくなく傾向にあることを明らかにした。また、言語の変化に時間が与える影響について考察し、文法化がどのように進むのかを分析した。総括担当の太田聡は、これらの研究をまとめるとともに、英語の屈折変化の規則的なものと不規則なものを生み出す二重メカニズムのモデルが、派生語の生成モデルとしても有効であることを論じた。これらの研究成果は、山口大学時間学研究所の公開セミナーにおいても発表できるよう準備中である。
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山口大学文学会志 60
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Journal of Cross-Cutural Studies 4
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「内」と「外」の言語学
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