研究概要 |
研究実績に挙げた学会発表3件のうち,2件は本研究と直接関係はないが,「シンポジウム:英和辞典とコーパス」は本研究での成果もふまえたもので,(1)自分の趣味について語るMy hobby is doing[to do].の型ではto doよりdoingが好まれto doとdoingの性質をよく反映していること,(2)存在のthere構文としてはthere isの短縮形であるthere'sの形がよく見られるのに対してthere areの短縮形であるthere'reの形は非短縮形の100分の1にも満たずthere'sの方が記号化が進んでいること,(3)否定的評価を表す語と共起することが多いa little(bit), abit, slightlyであるが,比較級を修飾する場合,変化を暗示する場合,onlyを含んで否定的暗示がある場合,強意を含む場合などは肯定的動詞とも用いられること,(4)it is[□!形](for A)to doの型においてfor Aの出没は文脈から類推できない場合に限られ全体の1割程度であること,(5)代用表現であるdo it/do that/do soなどについて,do it/do thatは積極的に禁止・許可・意志・必要性について述べる場合に,do soはややかたい言い方で,命令・助言などにただ従う場合や消極的あるいは二次的で何気ない行為について述べるときに好まれるといった基本的な傾向があることにふれながら,ESL/EFL辞典におけるシノニム・語法記述に関する考えを述べた。 図書の項で挙げた『コーパスと英語教育の接点』は,井上(2005)に追加修正を加えたものであるが,シノニムの一形態である変異形を学習辞書記述の観点から取り上げ,コーパスを辞書編集に使うようになると,通常は文法的に非文とされる形も出てくるので,教育現場で使うことが想定されている学習辞書において,非文をどのように扱うかはそのターゲットユーザーがだれであるかを考慮すべきであることを述べた。その際,not only A but(also) Bの構文におけるalsoの出没,each of themなどの代名詞の単複呼応,to不定詞の否定形であるnot to do/to not doの形などの例を挙げた。変異形は,学問的には面白い現象でついつい大きく扱いがちだが,実際にはそれほど頻度は高くなく,学習効率という面ではあまり強調しすぎない方が賢明であることを指摘した。
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