研究概要 |
1.aliveとliving「生きている」という意で用いられるaliveとlivingについて分析を試みた。aliveが動詞では,stay/keep aliveなど通常なら生存が不可能と思われる場面で生き長らえる際や,skinned/eaten/burnt aliveなど通常の文明社会ではありえない行為を生きたまま行なう際,また,形容詞では,通常では生存しているとは考えられないような状況で生きていることに対してlucky/happiest/thankful to be aliveのようにことさら感想を述べたり,the luckiest man aliveのように形容詞の最上級とともに「存命中で」といった制限をつけることで当該形容詞をことさら引き立てる場合,さらには,dead or aliveといった対照形で「生」と「死」の両方の可能性を許す条件設定をする場合など,いずれも「通常とは異なるための意外さ・異常さ」を暗示する文脈で選択されやすいことを示した。一方,livingは,living creatures/organismsなど生き物であることを明示する場合,one of Britain's greatest living dramatists,the four living ex-presidentsなど生死の別を区別する場合,a living encyclopedia, living fossilsなど比喩的に用いられる場合などに好まれることを示した。 2.silentとquiet まず,共起する名詞については,quietは,場所,期間,事,感情・態度,人など,多様な名詞と用いられるのに対して,silentは,行為,映画,人,期間,場所などを表す名詞と用いられる。silentは,通常は言語や音声を伴うものを無言あるいは無音で行う場合,もともと無言あるいは無音で行われるものでも対照的に強意で付加される場合に好まれる。共起する副詞についても,quietは多様な副詞と用いられるがsilentはもともと強意のため,一部の極大詞や,あまりの静けさに疑問を感じたり恐ろしさを感じることを表す副詞,主語の強い意志を暗示する副詞と相性がよい。共起する動詞については,quietとsilentで共通して用いられる共起する動詞も多いが,対照的な文脈で強意を表すものは場合,silentが好まれる。静かさを表す語として無標のquietに対して,無音や無言をことさら強調するsilentということになる。また,as quiet as possibleが見られて,as silent as possibleが見られないといった興味深い現象も報告し,その原因はsilentの段階性の低さに因るものであることを示した。
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