本研究では、主に認知言語学の立場から、主観性の概念を明らかにし、これとメタファー理論の関連性を検討した。3年間を通じて、3つのシンポジウム(1つは震災のため企画のみで中止)および1つのワークショップを主催し、さらに1つのシンポジウムおよび2つの会議で招待講演を行い本内容を発信した。さらに、2008年度のシンポジウムの講演者を中心に10余名が寄稿し人工知能学会学会誌2011年7月号が「主観性」特集として発行される。また、近著『日本語のメタファー』でのメタファー研究との関連や文献も含めて本研究結果を総括している。認知言語学の主観性は、発達心理学の自己中心参照枠、言語人類学の相対的指示枠、Recanatiの枠組みのimplicit de seと等価であり、今日、認知科学でひとつの潮流を形成しつつある身体性研究と概念のインタフェースとなるべき空間認知形式であることがわかった。
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