研究概要 |
英語における文法化を言語の起源にまで遡り、言語の進化という枠組みの中でその全体像を研究した。文法形態素、つまり機能語、屈折語尾は語彙語幹に由来し、時代と共にますます多くの文法化された形態が累積し、言語はますます複雑化することを明らかにした。文法化を引き起こすのは人間が生来持った能力であり、これは人類以外の認知能力にまで遡ると考えられる。このような能力の顕現として、英語史上の動詞的範疇(時制、相、法、態)、名詞的範疇(格、性、冠詞)、語順の発達、複文の発達の中に文法化を探った。 最も重要なのは、OEでの回帰的埋め込み文の出現と、その結果生じたVO語順である。それにより、節の談話的構成から厳密な統語的構成への変化が起こり、それと共に進行形、過去、過去分詞形、助動詞の迂言的用法、迂言的do、定冠詞が生じたことを明らかにした。 更に文法化が起こるのは頻度の高い語であり、多くの場合本来の内容語の意味も保持していることを明らかにした。そして文法化は話し手による頻度の高い内容語の隠喩的な意味変化により引き起こされ、文法化が起こる語と共におこる頻度の高い単語から除除に使用が拡大することを、膨大なOE,ME,EModE,PresEのコーパスを用いて実証した。 成果は、4月に行われるEighth International Conference on the Evolution of Language(University of Utrecht)で発表する。
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