研究概要 |
英語史上のデータに基づき、知覚における曖昧性の排除と語順の進化について研究した。 英語のようなSVOの語順を示す言語では、動詞Vは多義性を示すことが多く、目的語Oに起こる名詞とのあらゆる結合を考慮するため、Vの位置で一時的な意味の曖昧性が生ずる。他方、日本語のようなSOV語順を示す言語では、目的語が動詞の前に起こることから、動詞の意味の曖昧性が起こることはない。従って言語が誕生した折の語順は動詞の意味に曖昧性の起こらないSOV語順であったことを明らかにした。 Hauser et al.,"The Faculty of Language : What is it, who has it, and how did it evolve?"(Science 294,2002)では回帰性(recursion)は人間の言語のみにあると主張する。これに対して本研究では、関係節にみられる回帰性は、歴史的には並列文から発達し、それが一般的機能である階層性による配置により生じたものであることを示し、その過程で曖昧性の原因となる中央埋め込み文が回避され、OV語順からVO語順が生ずることを明らかにした。 前頭葉前部は連続的関係、結合的関係を司る重要な機能を担い、その注意喚起機能、意図機能が言語処理に用いられる。言語の連続的、結合的関係は、表象によるコミュニケーションがその基盤にあり、表象を習得するには概念との関係のみならず、他の表象あるいは概念とのおびただしい数の関係を学ぶ必要がある。連続的、結合的関係は複雑であればあるほど、前頭葉前部への負荷が大きくなる。このような負荷により生ずる曖昧性を排除するため、語順進化は起こったことを主張した。 成果は、Ninth International Conference on the Evolution of Languageで発表する。
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