研究概要 |
結果構文は歴史的に見れば古英語の動詞接頭辞構文(小辞構文)や中英語期に生産的になった句動詞(phrasal verb)構文と大いに関連があると言われている。残念ながら通時的に英語の結果構文を詳細に分析した先行研究は極めて少ない。まして文法標識(統語標識・品詞タグ)付き史的コーパスを利用しての研究は極めて少ない。 結果構文の結果述語(resultative predicative adjunct)を通時的に分析したVisser (1967)は古英語では結果述語を3例(claene, smale, orwige)あげ、中英語期に派生的結果構文が生産的になったと言われているが、中英語期では十数例をあげているに過ぎない。またKamiya(2007)はBrooklyn Corpusを用いて古英語期に結果構文が存在するかどうか検証した。平成20年度研究では先ず、結果構文を通時的に分析したVisser(1967)、Kamiya(2007)の先行研究を概観した。次にthe York-Toronto-Helsinki Parsed Corpus of Old English Prose (YCOE)を利用して、古英語に現れる小節(small clause)を検索し、その中に結果構文が存在するかどうか検証した。 YCOEの100のfileを検索した結果、BoethiusのConsolation of Philosophy (ファイル名:coboeth. o2)の中に1例のみ結果構文を見つけだすことができたが、翻訳であるため問題が残った。 Brooklyn corpusより10倍以上の語数をもつYCOEを利用して結果構文を検索したが、古英語では結果構文は極めて稀(Visserの例)であることが分かり、Visser(1967)やKamiya(2007)の先行研究を裏付けることができた。
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