主として従来の考え方の再吟味・再構成を主眼とし、以下のように文献研究を先行させつつ、それを補う若干二の調査研究を行うとともに、これまでの考察内容の暫定的なまとめを試みた。 1)言語(記号や情報を含む)の存立構造に焦点を当てた言語文化哲学的な諸論考、特に言語の「意味伝達機能の社会的・文化的諸契機」や「双方向的な表現/理解のコミュニケーション論的構造」についての考え方に焦点をしぼって文献研究を進めた。 2)日本語日本事情教育や言語文化教育に関する諸論考の、主として「言語運用力とその社会的・文化的諸機能の相互関係」についての考え方に焦点をしぼって吟味検討し、問題点の確認を行った。また、文献研究の過程で、特にヨーロッパで開催された国際学会や研究会などに出席して発表と意見交換を行い、言語文化教育の現伏についての関係者の受け止め方などについての情況把握を行った。 3)上記1)、2)の研究によって、言語的コミュニケーション場面、また言語的コミュニケーション能力育成過程における「言語と社会・文化の相互関係」について、言語哲学的・社会哲学的・文化哲学的な視野の拡充をはかると同時に、教育の現場における言語文化教育についての思想的立場や方法論的考え方を視野に収め、本研究の立脚点についての基盤固めを行った。 4)上記の研究過程で、従来から考察を進めていた「言語文化教育」ないしは「リテラシー教育(=情況応接力育成教育)」の言語教育的な側面に限定した「精読(行間に分け入って深く読む)」の概念規定に関して、暫定的な発表を行い、文章化して公表した。 5)上記の研究成果の蓄積と活用のために、それぞれの著書・論文・資料などの中枢的な理論的・実践的なアイデアを、萌芽的なものも含めてアイデア・バンクのような形で蓄積していく手順を検討した。
|