本研究の多面的・複合的な目的は以下の4点に整理することができる。 1)非日本語母語話者に対する「日本語日本事情教育」を言語教育論的、比較文化論的、現代社会論的な観点から統括的にとらえ返し、2)日本国内・外の「日本語日本事情教育」ないしは「日本語日本文化教育」及び「日本研究専攻の学部・大学院の専門教育」の多様性の根底において共有されるべき、「言語・社会・文化・教育を包括する言語文化的・社会文化的な実践力育成教育のための基礎理論」の構築を目指し、3)その基礎理論構築のための考察を土台として踏まえながら、様々な言語文化教育現場の特殊性を通底するような「汎用性の高い教育シラバス案の開発・考案」を目指そうとするものである。4)本研究の成果は、進捗状況に応じて随時、学会や研究会などに於いて発表し、批判的コメントを吸収し、最終的には報告書にまとめ出版する計画である。 22年度は、21年度までの研究成果を踏まえつつ、思想史的・哲学的な立脚点を確保するための系統的・思索的な文献研究を継続・深化させ、多言語・多文化社会ないしは複言語・複文化社会における「言語文化教育論」ないしは「言語・社会・文化・教育の統括理論としてのリテラシー教育論」、そして「言語習得に関わる認知発達・言語発達・行動発達論的な研究成果」に関する諸論考についての文献研究を進め、領域的な視界を拡充しつつ理論的・実践的なアイデアに関する知見の継続的蓄積を進めるべく努めてきた。他方において、教育現場における具体的・実践的な教育活動実態の特徴や可能性を把握するため、海外から研究者を招聘して知見の共有を図り、また海外の日本研究の大学院における授業を参観して専門的な日本研究教育の一端について実地に見聞し関連資料の収集を行った。さらに日本国内・外での言語教育学系、社会哲学系の研究会などに参加して知見を拡大するとともに関係者からの聞き取りを行うなど、言語文化的コミュニケーションの実態やアカデミックな異文化間コミュニケーションの実情をつぶさに観察する機会を持ち、貴重なデータを収集し、関連領域に関する視野を押し広げる作業を行った。
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