本年度は、主に以下の1〜3の研究活動を行った。 1.学習者の漢字学習に関する基礎的研究 通常の漢字クラスにおける学習者の産出データの分析を行って、初級および初中級の授業業用教材の開発につなげた。そのほか、中上級の非漢字圏学習者(10名)を対象とした個別のインタビュー調査を実施、それぞれの学習者が、漢字学習開始後、数年の間に行ってきた漢字学習の方法やその変遷、さらに現在の漢字のニーズや学習上の困難点等を調査した。本調査の結果については、今後の教材開発の参考資料とするだけでなく、将来漢字学習を始める学習者が学習上の指針として参照できるような提供方法を検討中である。 2.初中級学習者向けデジタル漢字教材の開発 本所属機関におけるeラーニング教材開発プロジェクトの一部として「初中級学習者向けデジタル漢字教材」の開発全般を担当、3月に完成した。本教材は、約500字の漢字を字形(部首、似た字形の識別)意味・機能(場面、動詞などの用法、接辞)などのさまざまな括りで毎回10〜15字程度ずつ提示するものである。デジタル教材の特性を生かし、語と漢字の意味の関係を、音声を媒介にして学習するパートを備えた点が特徴的である。そのほか、マウスオーバにより反復して読み練習ができる点、最小限の漢字語彙からなるSimple版と、より情報豊富なDetail版の選択ができ、学習者のレベルや目標に応じた利用が可能である点も特徴となっている。なお、本教材の概要については前原・李(2009)で報告を行い、その後、本所属機関のHP上で一般公開を開始した。 3.その他 効果的な教材開発および提供方法の検討のために教育工学等、周辺領域に関する情報収集も行った。
|