本研究は、インドの日本語教育の現状が、学習者と企業のニーズに合っていないという指摘を踏まえ、その改善に向けて日印間のビジネス上の問題点を探ることを第一の目的とする。その上で、シラバスや日本語を教える際に必要となるリソースリストを開発し、具体的な支援の方向性を打ち出すことを第二の目的とする。初年度は次の実態調査を予定通りに行った。 (1) インド国内におけるビジネス・コミュニケーション上の問題点に関する調査では、デリー、バンガロール、プネの3都市で就労しているインド人と日本人を対象としたインタビュー調査とPAC分析のための調査を行った。業者は製造業、IT関連企業が主であった。問題点に関するさまざまなケース(事例)を収集し、データのカテゴリー化を行っている。一部を日本人側の葛藤の多様性と学びという観点で研究発表した。 (2) 日本語教育現場における実態調査 上記3都市で日本語教育現場の課題(大学、日本語学校他)についてインタビュー、授業観察、PAC分析を行った。教育現場では教授法の知識が不足していること、ビジネスに関する情報を必要としていること、教師のビリーフが変わらず学習ニーズと現場で教えていることとの間に差が見られることなどがわかった。職務遂行の観点から実践を振り返ることと職務に焦点を当てた教えかたが重要であること、共生日本語の視点を持つことが肝要であることも見出された。成果の一部を学会・研究会、講演やセミナー等で発表した。
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