本研究は、インドの日本語教育の現状が、学習者と企業のニーズに合っていないという指摘を踏まえ、その改善に向けて日印間のビジネス上の問題点を探ることを第一の目的とした。その上で、シラバスや日本語を教える際に必要となるリソースリストを開発し、具体的な支援の方向性を打ち出すことを第二の目的とした。 インド3都市と日本(東京)でインタビューやPAC分析を行った結果、日本語それ自体に誤りがない場合でも日本人に誤解を与えてしまうインド人の言語行動が明らかになった。非言語行動においては、タイムマネージメントや責任の与え方など仕事のやり方やビジネス習慣の相違、人事評価の相違が摩擦の原因になっていた。さらに、インド人に説明をすることなく日本のやり方を踏襲することは、インド人の早期な退職につながることなどから、コミュニケーションの重要性が示された。 通訳を伴うビジネスの場面では、双方の誤解を防ぎ、理解を助けるような橋渡し的な通訳の存在が重要であることが明確になった。 一連の調査をもとに、仕事の現場で生じているさまざまな問題点を、行動分析や言語使用の点から整理し、製造業を例にシラバスやリソースリスト、能力記述文、通訳プログラム等を開発し具体的な支援の方向性を打ち出した。 本研究は継続申請により、引き続き教材開発とその評価のための研究を行っていく。
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