本研究はJSLの子どもの教科教育に着目したものであり、本年度(21年度)の研究成果として『日本教育実践学会第12回研究大会』において、以下の内容で発表した。 (概要)当発表論文は、「日本語を母語としない子どもたちの言語・教科教育」という今日の公立学校の喫緊の課題に取り組んだものである。具体的には、日本語ができるようになってから教科の学習に入るという段階移行的な教育観に対し、「教育の空白」を最小限にとどめるための新たな試みとして教科学習(国語科)を通して日本語も同時に学ぶという日本語と教科の相互育成的な教育観を提案し、実践事例によりその可能性を提示した。具体的には、教科書教材を「リライト教材」に書き換えたものを用い、編入一か月後から学年相当の教科学習のを開始し編入半年後に在籍学級に入るまでの記録のうち、編入2か月半で行った「こんなお話を考えた」(小2年生、国語下、光村図書の、お話を考えて絵本を作る活動)を日本語の力が十分でない子どもにどのような工夫をして学年相当の学習を進めて行ったかを報告したものである。本報告は、日本語ができるようようになるのを待たず、教科学習開始が可能であることを示すものであり、従来の「日常会話→教科学習」の2段階の指導という暗黙の前提を覆すものである。
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