今年度は研究の初年度であり、関連学会・研究会への出席や文献資料・情報の収集を行い研究体制の整備を行うことに努めた。また、次年度以降に本格的な調査を実施するための予備調査として、様々な日本語学習者の複合語アクセントデータを収集し、その特徴と課題を探った。調査に関しては、具体的には以下のような活動を行った。 1.日本在住の留学生22名(母語は韓国語、中国語(中国、台湾)、スウェーデン語、ロシア語)の複合名詞発話を録音し(3回)アクセント型別に分析した。1回目は何も教えずに発話してもらい、2回目は規則を教えた後2か月後、3回目は4か月後。その結果、母語によらず練習をした学生は習得ができていることがわかり、教えることが有効であることが分かった。しかし、ある程度の訓練を行わないと自分の発話の高低を意識化できないことも分かった。 2.中国語と同じ声調言語であるベトナム語を母語とするベトナム在住(ホーチミン、ハノイ)日本語学習者の単純名詞・複合名詞発話を録音し(3回)アクセント型別に分析した。その結果、単純語複合語共に、全て同じ高さで発音したり、最後の拍が下降するものが多かった。複合語では、中国語話者にも多いと言われる1語の中で2度高い箇所が見られる「二度上がり」(形態素境界に下降がある形が多い)が多く見られ、拍数の多い語、正解率の低い語に出現しやすいことが分かった。また、前部要素が頭高型、特殊拍が含まれている語の正解率が低かった。
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