研究課題/領域番号 |
20520476
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
山下 暁美 明海大学, 外国語学部, 教授 (10245029)
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研究分担者 |
井上 史雄 明海大学, 外国語学部, 教授 (40011332)
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キーワード | 多言語社会 / 日本語教育 / コミュニケーションスキル / 好感度 / 地域社会 / 言語規範 / 日系ブラジル人 / 敬語 |
研究概要 |
本研究では、在日外国人日本語学習者がコミュニケーション能力の向上のために、どんな知識とスキルが必要なのかについて談話分析を通して考察した。 BTSJによる分析結果では、あいづち、敬語使用、終助詞等で大きな差異が見られないのに、好感度では差が大きい、話者A(好感度第1位の4.6)と、話者B(下位の3.8)を比較し、何が好感度に影響を与えているのかについて分析考察した。 終助詞について両者を比べると、話者Aの「ね」は長く、ピッチの落差が大きい。話者Aのほうが長さと落差によって、やさしさや、親しみやすさを表現していて、待遇表現が成功していることがわかった。また、話者Aは、話者Bに比べて多様な終助詞を使用していた。あいづちについても話者Bは、かなり限られた範囲のあいづちしか使用していないことがわかった。話者Aの敬語体の使用率は、話者Bに比べてやや高く、話者Bは、普通体の使用率が話者Aに比べて高かった。話者Aは初対面ということや場面をわきまえて、母語話者に対してアップシフトを試みている。好感度が高くなった理由の一つと考えられる。一方、話者Bのアップシフトは、母語話者と同程度の割合を占め、ダウンシフトを避けて、そのかわりにカウントが不可能な「はい」というあいづちや言いさし、アップシフトでもダウンシフトでもない母語話者の発話の末尾部分の繰り返しを多く用いていた。 以上のように、話者Bの親しさを表現し、距離感をなくすためのコミュニケーションストラテジーは、必ずしも成功していない。外国人労働者の滞在が長期化するなかで、今後日本語教育が補足していかなければならない課題だと思われる。
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