本研究は、多言語社会の日本語教育について、社会言語学的な視点をとりいれた総合研究となった。「変異」、「談話分析によるコミュニケーション行動」、「地域社会の外国人と言語問題」、「グローバル化の中の日本語教育政策」等を主な研究目的としてスタートした。 日本語母語話者側と日本在住の外国人側の両面から、文化・社会・心理的な要素を考慮に入れて、共生時代の日本語教育の再検討のための基礎的研究を行なった。 国内の多言語状況を見ると、日本語教育における文化、社会、心理的要因の分析に着目した多面的研究が必要とされている。各研究領域で単発的に行われている研究を、本研究では、社会言語学という一定の統一的理論に立って、日本語教育の現状、問題点について、分析、考察を行った。 具体的な成果として、日本語学習者の情的コミュニケーションの考察、多言語社会のコミュニケーション摩擦について「曖昧性」を課題とした研究、日本人大学生の理解力の研究、日本語とポルトガル語の言語接触、日本語景観の歴史的分析による言語接触、多言語化の研究などをあげることができる。これらの研究成果は、多岐にわたった。 継続的に研究成果の報告会を開催し、活発な意見交換を行なってきた。大学院生の参加も含め、研究組織以外の外部からの発表者の参加も得ることができた。 また、報告書を作成した。報告書には、これまでの研究実績の一部を編集したが、振り返りと今後への展望のために作成した。今後の新たな日本語教育を考える一助となれば幸いである。 研究にあたって各地の機関に場所の提供などのご協力をいただいた。
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