本研究の目的は第一に、日本人の議論の構造上の特徴を明らかにすると同時に、議論の構造上の特徴を説明する要因を実証的に明らかにすることである。第二に、異なる構造の議論が受け手にどのように評価される傾向があるかを明らかにする。第三に、それらの研究結果を教育に応用する。 平成22年度は主に第二と第三の目的の達成に取り組んだ。そのうち第一の実績は、議論の構造を記述する5つの指標の使用と受け手の評価との関係を明らかにしたことである。この点について、データを整理・分析し、論文にまとめた。この論文は、平成23年度に開催される米国コミュニケーション学会での発表を申請中で、同時に雑誌Written Communicationに投稿中である。5つの指標とは、(a)水平的-垂直的マクロ構造、(b)漸降的-漸層的マクロ構造、(c)複合的ミクロ構造の理由付け、(d)連続的ミクロ構造の理由付け、(e)議論の長さ、である。分析の結果、異なる構造の議論を評価する際、日本人はより直接的で、複雑な構造の議論を高く評価する傾向があることが明らかになった。 平成22年度の第二の実績としては、これまでの研究結果を教育へ応用する教材を開発したことである。この教材は英語教育用の教材として発信型コミュニケーション能力養成の目的で作成された。Week 1からWeek 4までの四回連続の講義(教材は全21頁)では、英語で効果的な議論をするための具体的な方法について解説し、練習問題を通じて学生が英語の議論を組み立てられるよう指導する。Week 1は議論の基礎と基本型、Week 2は議論の発展のさせ方、Week 3は二種類のマクロ構造、Week 4はより複雑な理由付けの組み立て方についてそれぞれ学習する。23年度の授業で実際に使用の予定である。 この他に平成20-21年度の実績が2編の論文として国際的な専門誌に掲載・出版された(次頁参照)。
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