本年度は、英語変種の提示方法と内容理解との関係性に焦点を当てて研究した。具体的には、一般的な日本人になじみのない音声英語の発話速度をデジタル的に変換、日本人大学生被験者に与えて、それに対する内容理解度の変化を調べるというものである。音声吹き込み者は、ケニア、ガーナ、インド、スリランカなどの出身で、英語を第二言語として使用する大学院生である。彼らに短いパラグラフを読んでもらい、その音声を元にオリジナル速度と20パーセント遅くした調整速度の2種類のリスニング・コンプリヘンション・テストを作成した。日本人被験者は、実験群(1回目-オリジナル速度、2回目-調整速度)と統制群(1、2回目ともオリジナル速度)に分かれて、リスニングテストを受験し、また吹き込み者(オリジナル音声)の詑と速度をリカルト・スケール上で評価した。 結果、リスニングテストの総合点においては、実験群と統制群との間に、速度変換による差は見られなかったが、個々の吹き込み者に関する得点を調べたところ、最も設が強いと評価されたスピーカーについてのみ、調整速度テストの点数がオリジナルテストに比べて有意に高かった。一方で、最も速度が速いと評価されたスピーカーについては有意な得点差は見られなかった。 昨今、国際語としての英語教育が盛んに議論されている。学習者にあまりなじみのない英語変種、とりわけ詑が強いと判断される音声英語を教育現場に取り入れる際には、CALLシステムなどを利用して速度を遅めに調整することが、学習者の理解度をより高めるためには有効であると考えられる。
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