研究概要 |
本年度は,3年間の研究課題の初年度として、主に、理論的な基礎固めと生のデータを収集することに努めた。 (1)文献研究を通じて、また.学会発表やイギリスの研究者との交流を通して、コード・スイッチングに関連した諸問題やplurilingualism(複言語主義)という新しい概念に関して理解を深めることができた。とりわけ、「複言語主義」という考え方は、ヨーロッパだけにとどまらず、日本の英語教育にとっても有益な指針となることが確認できた。 (2)バイリンガルの二言語切り替えに関して、調査協力も得ながら、幅広く生のデータを収集した。そこでは、興味深い社会的、心理的条件を観察することができた。岡(1995)の枠組みをもとに分類三分析し、「文化文法の切り替え」としてその枠組みを精密化していきたい。 (3)第二言語学習者の「文化的意訳」(L1')のプロセスに関して、Oka(2006)のモデルをもとに,さらにふくらませるべく日本人英語学習者からのデータ収集に取り組んだ。多大で多様なL1'の事例をどのように類型化し、効果的な指導に結びつけることができるのか、今後検討を進め具体化していきたい。 これらのプロジェクトを通じて、異文化間伝達能力(Intercultural communicative competence)の仕組みについて、その中身が少しずつ明らかにできつつある。つまり、異文化間コミュニケーションに関して、これまで言語操作だけに限定されがちであった見方から、f総合性」と「相対性」がキーワードになるというダイナミックなとらえ方が生まれてきた。
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