本科研の2年目として、当初の研究実施計画に沿って研究を進めていった。その結果、次のような実績があがった。 (1) バイリンガルの言語切り替え(code-switching)に関して、広くデータの収集につとめるとともに、集まった資料の整理と分析に取り組んだ。切り替えのメカニズムに関し語用論的動機の解明に迫るため、社会的要因と心理的要因に分類し、さらに細区分していった。と同時に、それらの要因の絡み合いにも注目した。 (2) バイリンガルの二言語発達に関して、日・英語バイリンガルの詳細な記録データを入手し、その記述と分析に着手した。単語や文レベルをこえて、小学校の中学年からの認知的発達との関連における言語発達に関しては、世界的に未だ研究が十分ではないので、談話レベルでの新しい分析の枠組みに関して検討を加えた。とくに、バイリンガルの言語使用の二つのレベル(BICSとCALP)の実態とその発達過程に焦点を合わせた。 (3) 小学校の英語教育や中等学校のバイリンガル教育の観察を通して、子供たちの中に第二言語がどのように発達し、産出能力に結びついていくのかを調査した。また、アメリカの学会出張では、第二言語習得研究に関して最新の知見に触れることができ、意義深いものであった。とりわけ、最近脚光を浴びてきたCLIL(Content and Language Integrated Learning)は、バイリンガル研究と外国語教育の接点として、これからの日本の英語教育のあり方を考える上で大きな可能性を秘めていることを確認した。
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