研究概要 |
本科研の3年目の最終年度として、これまでの研究をさらに推進し、当初の目的に沿ってそれらを分析し、まとめた。その結果として得られた実績は、次の3点にまとめることができる。 (1)バイリンガルの二言語発達に関して、新たに日・独語バイリンガルの発達に関してもフィールドワークし、その記述と分析に取り組んだ。幼児の認知的な成長と相関して興味深い発見が多々あった。また、日・英語のバイリンガルの書きことばの資料の分析にもとづき,小学校中学年以降のCALP(学習言語能力)の発達という観点から考察を加えた。 (2)バイリンガルの言語切り替え(code-switching)に関して、新しく収集したデータも加え、その整理と分析に取り組んだ。コード・スイッチングの語用論的動機を解明するため、社会的要因と心理的要因に分類したが、とりわけ興味深い視点は、それらの要因の絡み合いと「文化文法の切り替え」であった。 (3)バイリンガル教育の実態を観察し、子供たちの中に第二言語がどのように発達し、産出能力に結びついていくのかを調査した。日本の英語教育のあり方を考える上で、CEFR(ヨーロッパ共通参照枠)の提唱するplurilingualism(複言語主義)の理念、それを達成するアプローチとしてCLIL(Content and Language Integrated Learning)に注目した。産出能力に関しては、インタラクティブな「異文化間伝達能力」としてモデル化した。
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