当研究の目的は、日本語母語話者が正則アラビア語を習得する際、どのように語彙を習得しているか、あるいはどのように語彙を習得していくのが望ましいかを明らかにすることである。まず、アラビア語の語彙習得に関しては、アラビア語を含むセム諸語の特徴である、そしてアラビア語の文法理解、文法習得において重要な役割を果たす「語根」の概念を生かしていくことが、有益かつ重要であることが明らかとなった。 また、アラビア語学習の初期において語彙を定着させていくことが、学習者のアラビア文字の習得にも繋がっており、語彙の習得は早い段階から行われることが必要であることが示された。 国内やアラブ諸国で用いられているアラビア語教科書は、必ずしも語根を基盤に新出語彙を提示しているとは限らず、語彙習得の面からみると、やや非効率的と言わざるを得ない。さらに、文法訳読法に基づく国内のアラビア語教科書は、文脈の中で語彙を身に付けるという方法が取りにくくなっており、さらに問題である。ただし、文脈の中での語彙習得にこだわる過ぎることも非効率的であることが知られ、機械的に単語を暗記する作業も必要であることも格言しておきたい。さらに、単語暗記ための有効な方法を、心理学と言語習得論の立場から提唱する。 他方、語彙習得の効率を上げる方法のひとつは、言うまでもなく出現頻度の高い単語を身に付けることであり、これに関しても、各種資料(出現頻度についての先行研究や、実際のテクストからの調査結果)から学習の各段階で習得すべき語彙をリストアップし明示する作業を行っている。
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