21年度は20年度同様、電気通信大学の1年次生120人、2年生80人、3年生40人を対象に、多読および多聴による自律的学習を支援する授業を行なった。19年度までの多読・多聴授業の開発により、研究の基盤はすでにできていた。その多読および多聴は「細部にこだわらない、わからない部分は無視する、自分に合わない本や音声素材は途中でやめる」という三原則に基づくものである。また多読素材はこれまでの英語教育の常識を破って、英語国の幼稚園児向けの絵本からはじめ、1年間に数百冊から1000冊を越える量を読むものである。これにより従来の英文和訳に寄らずに英語を英語のまま読み進めることができることが判明している。典型的な成果としては、研究代表者の多読・多聴クラスを2年間受講したある学生が、1年終了時に320点だったTOEICの点数が、4年夏休み前に640点と倍増した例がある。これは前述の三原則に基づく多読の成果と考えることができるが、CDを聞きながらの読解速度は1分間に120語から150語に達している。多読クラスを経験していない大学生が英文を読む速度は速くて1分間50語程度であり、その速度でも遅すぎて読了はむずかしいことを考えると、多読多聴による理解の速さが推察できる。またこうした成果により、多読・多聴は2005年3月の「教室で読む英語100万語」(神田みなみと共著、大修館書店)以来中学高校大学に広がりをみせており、研究代表者は日本各地に招かれて多読・多聴授業に関する講演、授業指導をしている。2009年度には100回を越える普及活動に携わり、研究課題の成果を広めた。
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