[内容]多文化・多言語社会への言語的対応という問題において、とくに愛知県を中心とした南米出身者集住地域におけるスペイン語圏出身者への情報提供のあり方についての分析・考察を行い、今後この分野で重要な人材となるであろう「多文化ソーシャルワーカー」に求められている資質や、実際に提供されているサービスの質と量に関する調査をとおして、多言語情報サービスの現状を映し出すことを目的とし、平成20年度は次の研究を行った。コミュニティ通訳4分野において必要とされる能力を身につけるための専門分野スペイン語教育と、これまで大学で行われてきた一般スペイン語教育とを比較し、前者における教授者の役割について考察し発表した。また愛知県における南米出身者の増加と、スペイン語教育・ポルトガル語教育についてまとめ、これらの言語による支援の現状と課題を言語教育という視点から考察した。さらに、日本と同様に90年代に移民が急増したスペインにおいて、セビーリャ市における非スペイン語話者に対する言語支援のあり方について調査を実施した。 [意義]外国人登録者数のなかでブラジル出身者がもっとも多いことで知られる愛知県では、近年ポルトガル語による情報提供・コミュニケーション支援を行うことが、外国人住民への支援ととらえられる傾向がある。研究においても、ブラジル人への支援やポルトガル語コミュニティに関するものが多く存在するなかで、スペイン語による支援・スペイン語圏出身者に対する支援に注目し、現状を調査・分析することにより、自治体がめざそうとする「多言語・多文化社会」がどういうものなのかをより明確に描き出すことができるという点で意義がある。 また、外国語学部における教育研究活動がどのような形で地域のコミュニケーション支援にも結びついていくかという点について重要な意味を持つ。
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