研究概要 |
多文化・多言語社会への言語的対応という問題に関して、2010年度は教育、医療、司法の3分野におけるスペイン語表現について考察をすすめた。ウェブ上で提供されているスペイン語による情報の一部は、たとえ公的機関により提供されているものであっても、スペイン語における誤りが多く情報が公開される前に専門家により精査されていないことがわかる。また、スペイン語表現における性別の表現方法を考察した。その成果の一部がLinguistica Hispanica Anexo 5(『スペイン語記述文法』(1999(『スペイン語新文法』(2009))章別要約)「新文法 第2章 性」(2011, 138-161)である。これをもとに教育分野をはじめ行政など公的文書でのスペイン語表現にどのように適用できるかを現在考察している。司法分野については、スペイン語およびポルトガル語通訳付き裁判を傍聴した。法廷通訳において専門的な法律用語の翻訳/通訳能力だけでなく、「被告人質問」「証人尋問」では、位置関係などを示す表現を使用し正確に内容を通訳することの難しさについても注目されるが必要である。 関西地域におけるスペイン語、ポルトガル語の情報提供について調査した。関西地域では、教育、医療、防災関連においてより豊富な情報提供を行っている。とくに医療分野については医療通訳スタッフを有する医療機関、医療通訳研究会、NPOなど医療通訳実施に関わる多数の団体が存在していることでより充実したサービスを提供できていると考えられる。愛知県においても2011年度から医療通訳システムを試行することが決まった。外国語教育を専門としている複数の大学との連携が注目されており、通訳者の養成や運用について今後注目していきたい。
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