最終年度にあたる平成22年度は、日本人英語学習者(大学生)が作成した英文ライティングに含まれる文法エラーを分析した結果に基づいて以下の研究を実施した。 (1) 頻度の高い文法エラーに関する学習支援ツールを開発 前年度のエラー分析結果から出現頻度の高い文法エラーを選定し、エラーに関する説明文と複数の練習問題(解説を含む)をウェブ上に実装した。さらに、文単位のエラーだけでなく、文と文の繋がりに関する説明文と練習問題も追加した。練習問題として、従来のような独立した文単位での出題ではなく、日本人大学生にとって馴染みのある話題を扱ったパラグラフ(英語母語話者に作成依頼)を用いた(文脈情報を重要視した)点に新規性がある。 (2) 本研究で作成した英文ライティング学習支援ツールのユーザビリティ評価 東京国際大学言語コミュニケーション学部の1・2年生26名に英文ライティング学習支援ツールを使用してもらい、使い勝手(usability)を中心としたユーザ評価を実施した。文法項目により説明文や練習問題の理解容易性に違いが生じたため、特に冠詞の使用法のように日本人英語学習者にとって難しい文法項目に関する支援方法の見直しが必要であること、文と文を繋ぐ談話構造に関しては英文ライティング授業の中で教員による説明とともにツールを使用したほうがよいこと、練習問題は難易度別に現在の問題数よりも多く提供されることが望ましいということがわかった。 学習者コーパスに含まれる学習者のデータに基づいた英文ライティング学習支援ツールは、日本人英語学習者にとって重要度の高い課題を選択的に扱えるという利点を有することが明確になった。
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