2009年度は、前年度に引続き、多読を2年以上にわたり継続する大学生英語学習者に関する、読書量、英語力、学習意欲などの変化のプロセスのデータ収集と質的分析を行った。また、比較対象とするために、多読を継続しないケースの記録も続けた。焦点としたのは前年度と同様、 1、多読を順調に進める要因と困難にする要因、 2、多読を長期継続した学生の読書力の伸びとその要因、 3、多読の成果の学生による差異、 の3点であり、加えて、辞書の使用、多読用図書と多読継続との関連について研究を行った。本研究で得られた示唆は、効果的な英語多読指導に貢献するものである。 本研究で得られた研究成果は、論文、研究発表、共編著として発表した。1の多読を順調に進める要因と困難にする要因については、前年度の学会発表に更に加筆修正を行い論文にまとめた(JALT2008Proceedings)。また、多読で辞書に頼る学生は継続に至らない傾向があるが、継続に成功する学生が辞書を全く利用していないわけではなかった。多読と辞書の使用との関連を含む、大学生の語彙の習得方法について調べる目的で、アンケート調査を行い(平成国際大学紀要論文)、統計手法を用いて、辞書の使用と語彙学習ストラテジーには関連が見られないことが示された。また多読用図書については、継続する学生はgraded readers (GR)を効果的に用いる傾向が見られた。大学生の場合は、英語話者向けの児童書からGRへ読書の範囲を広げることが多読の継続の助けになると思われる。学生向けの多読用図書の開拓の成果は『英語多読完全ブックガイド』に含めることが出来た。2については論文(国際異文化学会誌)、3は学会発表(日本多読学会)にまとめた。
|