国際語としての英語の役割が増大しつつある昨今、教育現場では、英語母語話者の英語をモデルとすることは、もはや現実的ではなく、言語モデルや指導内容を見直す時期にきていると思われる。 本研究では、日本人スピーカーの、音韻的及び言語学的特徴に基づき、日本人英語の聞き取りやすさ(intelligibility)の尺度を構築し、教育現場で応用することを目的とする。 初年度である2008年度には、研究代表者及び分担者の勤務校の学生の協力を得て20人分のスピーチサンプルを得、シンガポール国立大学(在シンガポール)の約百名の学生、及びニューヨーク市立大学(在アメリカ)の約百名の学生を聞き手として、聞き取りやすさを測る調査を行った。その結果、英語を公用語として使うシンガポールの聞き手は、日本人英語のイントネーション及び母音の特質など主に音声的特徴をもとに、聞き取りやすさの判断をしていたが、英語を母語として使うアメリカの聞き手は、むしろ自信を持った話し方等、音声、言語的以外の特徴を多くあげていた。また、スピーチサンプルの、英語の表現の使い方がやや文脈にそぐわないときなど失笑ももれた。英語の音声的、言語的な外国訛りに関する偏見は低く、文脈に適した表現の使用が、効果的なコミュニケーションのカギである可能性が暗示された。次年度は、これらのデータをより深く分析し、更に新しいデータを加えて、聞き取りやすさの尺度をより精密に構築することを目的とし、教育現場への応用のパイロットも視野に入れたい。
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