研究概要 |
まず、統語(文法)に関係する形式特性に基づいた計算システムと調音・知覚システムならびに概念・意図システム両方に接触するインターフェイスに関する原理原則(例えば、Uriagereka(1999)が提唱するMultiple Spell-out)にしたがって、否定極性表現と数量詞表現を含む文がどのように生成・解釈されるか、またコンテクストが容認度にどのように影響を与えるかについて、不定代名詞「誰」「何」+助詞「も」の二通りの組み合わせ(合体した場合と分離した場合)を含む文に焦点を当て、昨年度の実験に加え、日本語の大人の母語話者(津田塾大学・独協大学の学生)に追加実験を行い、統計分析を行った。運用論上の要因が、文の解釈に影響を与える(容認度を上げる)という、その結果をふまえて、さらに、子供の日本語の母語話者に対して、数量詞化された数詞について、実験を実施した。具体的には、運用上数量詞化された数詞として解釈できる文と語彙上数量詞化された数詞として解釈される文に焦点を当て、真偽判定作業(15種類)を作成し、大人の母語話者として高千穂大学の学生及び教職員に、また言語獲得過程にある子供の母語話者として高千穂幼稚園の園児(5歳~6歳)に、実験を実施した。その結果、英語の場合とは対照的に、日本語の母語話者としての子供の場合は、語彙上数量詞化された数詞のほうが、運用上数量詞化された数詞よりも、早く獲得することが明らかになった。 また、研究の成果を日本言語科学学会第11回年次国際大会(ポスター発表・東京電気大学埼玉鳩山校舎於)とMid-America Linguistics Confθrence(口頭発表・University of Missouri, Columbia於)で、発表した。
|