研究課題
本研究は、幼稚園や小学校で外国語を学習した場合、大人になってからの外国語の音声習得や維持にどのような影響を及ぼすかを、最近の第二言語の音声習得の理論的枠組みで、音響分析と聴取実験により検証した。具体的には、日本語イマージョン・プログラムの小学校を卒業後、日本語インプットが少なくなった場合、その後の日本語の音声能力(閉鎖音の開放から次の母音が始まるまでの時間であるvoice onset time(VOT)と促音)にどのような影響を与えるかに焦点を当てた。1)日本語母語話者、2)英語母語話者、3)幼稚園または小学校1年生から米国の日本語イマージョン・プログラムに在籍し、中学校と高校では伝統的なカリキュラムで日本語を学習し、データー収集の時点で大学3・4年生の日本語(中級)を履修している英語を母語とする学習者、4)高校または大学から日本語を学習し始めた、同じく3・4年生の日本語を履修している英語を母語とする大学生の計4グループのVOT、促音と非促音の閉鎖持続時間、促音対非促音の長さの比を音響分析した。さらに、学習者が促音と非促音の区別が正確にできているかを判定するために、日本語母語話者による学習者の促音と非促音の聴取評価を行った。幼児期に日本語インプットがなかった大学生グループより、幼稚園・小学校で日本語イマージョン教育を経験した大学生グループのほうが優れていた項目は、母語話者による促音の判定のみであった。その他の項目(VOT、閉鎖持続時間、促音と非促音の閉鎖持続時間の割合、非促音の聴取判定)では、両グループとも統計的な有意差はなかった。すなわち、伝統的な外国語教育に比べて、イマージョン教育のようなインプット量の多い外国語教育でも、音声習得への長期的な効果はあまり期待できないという前年度までの暫定的な研究結果が立証された。
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早稲田教育評論
巻: 25巻1号 ページ: 1-14
Achievements and perspectives in the acquisition of second language speech : New Sounds 2010
ページ: 103-115
Proceedings of the 6th International Symposium on the Acquisition of Second Language Speech, New Sounds
巻: (CD-ROM) ページ: 1-6