研究課題/領域番号 |
20520528
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
楊 立明 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (10267354)
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研究分担者 |
中村 みどり 早稲田大学, 国際教養学術院, 助手 (30434351)
池上 摩希子 早稲田大学, 日本語教育研究センター, 教授 (80409721)
周 飛帆 千葉大学, 言語教育センター, 准教授 (80270867)
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キーワード | 言語応用能力 / 社会適応 / 受入れ環境 / 協同的作用 / 進路志向 |
研究概要 |
今年度は研究の最終年度であり、2年間のインタビュー調査で蓄積してきたデータを分析し、研究代表者・分担者がそれぞれの専門の視点から中間発表を行い、以下の通り考察を行った。(1)言語能力テストのスコアと実社会における言語応用能力との間には乖離が見られる。特にスコアの低い被験者は就職や進学に際し、非言語コミュニケーションスキル等で言語能力の不足を補う傾向が強い。(2)日本語能力上位グループ(A組)と英語能力上位グループ(B組)には異なる言語使用戦略が見られた。例えば、A組には完壁な日本語の習得を目指し、日本的価値観を全面的に受け入れようとする者が多い。しかし、学習年数が長くなるにつれ、その言語観は微妙に変化し、日本社会・日本人との間に距離を置くようになる者も見られた。一方、B組には日本語能力が上達したにも拘らず、日本人との交渉を有利に行うため、故意に英語を使用する者もいた。(3)今日の留学生の価値観とキャリア志向は多様化している。卒業後の進路の不確定は、彼らの言語習得戦略に影響をもたらしている。(4)進路の選択に際し、留学生本人の希望よりも、両親の意見や留学生の先輩の実績に影響されることが大きい。 上述の考察の更なる傍証を求め、インタビュー調査の対象を留学生の父母と既卒者まで拡大した。中国上海・蘇州等を訪問し、留学生の父母や既卒者約40名と面会し、貴重な証言を得た。以上の結果、考察を踏まえ、本研究チームは中国湖南大学外国語与国際教育学院.湖南大学日本語言文化研究所などと国際シンポジウム「中日留学の新展開」を共同開催し、中国側との学術交流を行った。中国側からは国際教育の研究者、大学の留学業務担当者、日本留学経験者等が参加し、幅広い研究成果を披露し、また本研究チームの具体的な問題提起は活発な議論を呼んだ。本研究成果の一環として、上記国際シンポジウムの論文集の作成を進めている。
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