最終年度の活動として、研究成果報告書をまとめた。この中で、まず、定量的アプローチによりアジア圏教科書における直喩を分析したところ、アジア圏教科書における比喩の扱いについては量的にも質的にもいまだ改善の余地が残ることが示唆された。今後、比喩の観点をより取り入れた教材の製作が求められる。日本国内では、高校で使用されている英語I・IIの教科書を対象に高頻度の重要比喩表現を抽出し、これに基づいたテストを作成し、大学生がこれらの表現をどの程度習得しているかを調査した。この結果、比喩表現の習得度は語彙の習得度と相関が強いことが判明した。 動詞の意味拡張という点では、英語I・IIの教科書について、レベルが初級から中級、上級に上がるに従って動詞が比喩的に使われる割合が高まることも判明したが、海外で国語教育に用いられている教材における比喩表現の扱いや、BNCを用いた動詞や形容詞・副詞との共起を調査した結果、日本の英語教育で比喩表現をより積極的に扱う必要性が指摘された。比喩指導の方法については、授業で学習者に「ことば」の奥深さを認識してもらうことを目的とし、まずは比喩的表現に気付かせることから始め、誰にでも理解される普遍的な発想による表現や類推で理解可能な表現へと進み、次いで特定の文化に根ざす比喩表現もあるという認識を持たせる。さらに、比喩(メタファー)の仕組みを学習し、比喩的表現の使用可能性という産出面についての認識を高める。最後に比喩的表現を使ったパッセージを書く、などの段階を踏んだ教授方法を提案するとともに、高校の英語教科書を例にとり、比喩を活用した授業実践を提案した。
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