英語学習者から圧倒的な支持を得ている電子辞書であるが、教育現場では、学習に有効利用されているとはいいがたい現状がある。その理由として、辞書検索には複雑な認知行動が要求されることに加え、学習者が特に電子辞書の利用法などを教授されてこなかったことがあげられる。 平成20年度は、これらの現状をふまえ、また、小山(2007)で得た先行知見をもとに、英文の基礎読解力を養成するクラス(大学人文系学部2回生14名)を対象に実証研究を2つ行った。研究目的は、1)電子辞書を有効に使用して英語力向上を図るための「辞書使用の方略」が、どの程度学習者に定着するかを検証、2)教授法として提言することであった。 一つ目の実験では、Koyama(2006)で見いだされた効果的な使用方略を、英文読解授業の中で教授した。しかしながら、8週間後の検証では、それらの方略は十分には定着しないことが判明した。この結果は2008年11月にインドネシアで開催されたGloCALL2008で公表した。 二つ目の実験では、一つ目の問題点をふまえ、教授する方略を一つに絞ってその有効性を明示し、かつ、授業外のタスクと復習テストと連携して教授した。具体的は、電子辞書のジャンプ機能を活用して英英辞典で、未知の単語や成句の意味を確認するというものであった。結果として、8週間後に配布した質問紙の回答から、こちらも十分には定着しないことが示唆された。この結果は2009年度の学会で公表予定である。
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